田嶋吉信さんへのインタビュー記事第2弾! 合同会社ルモンドトウキョウの代表で、ギャラリー・スタジオ・エージェントの3つの事業を展開している田嶋さん。イラストレーションを愛する者のユートピア・「ルモンド」に込める情熱とお仕事のやりがいを伺いました。
さらに、アシスタントの手塚桃子さんにもお話を伺いました。イラストレーションをお仕事にしている方、これからお仕事にしようと考えている方は特に必見です!
お話を伺った方
田嶋吉信さん
千葉県松戸市出身。1995年にThe American Intercontinental University in Londonにてコマーシャルアート専攻でBA取得。
大学卒業以降、何でも対応できるグラフィックデザイナーを目指して音楽関連を中心に広告、エディトリアル、映像、CDカヴァ等のアートディレクションとデザインに携わる。2007年秋に初著作「パリ!サーカス!パリ!」を上梓。本ポスターは2008年TDC賞(東京タイプディレクターズクラブ賞)入選。
2015年1月よりギャラリールモンドの企画運営、2019年8月よりエージェントルモンド、2023年9月よりスタジオルモンドも運営し現在に至る。
手塚桃子さん
静岡県出身。静岡文化芸術大学卒業。
イラストレーターの活躍の場を広げる秘訣
――田嶋さんがギャラリールモンドの経営を始めたきっかけはどのようなものだったのですか?
もともと僕はフリーランスでグラフィックデザインとイラストレーターをやっていて、エージェントに所属してたんですよ。そこで、自分自身もイラストレーターでありながら、他のイラストレーターのコーディネーションも行うようになりました。
※「コーディネーション」とは……
クライアントとイラストレーターを結び付ける仕事のこと。
そのときに、エージェントの代表や家族に「裏方やコーディネーターの方が向いてるんじゃない」と言われました。僕も「本当にイラストレーターとして死ぬまで続けていけるかな」っていう不安があったし、自分の好きなイラストレーターの展示をするのは夢でもありました。そこで「イラストレーターのためのギャラリー」を作ろうと思い、2015年1月からギャラリールモンドを始めました。また、2019年からはエージェント業務も行っています。
――エージェントルモンドでは、現在はイラストレーター6名のマネジメントを行っていらっしゃるのですよね。エージェント業務では、どのようなことを心掛けてお仕事をされているのですか?
今抱えているイラストレーターによく言っているのは「+α の提案をする」ということです。
東京に住んでいる2人の外国人のイラストレーターを担当したことがあるのですが、ヨーロッパと日本で、お仕事のやり方は少し違ったんです。たとえば、日本の雑誌だと編集者やディレクターが、ラフをかなり作った上でイラストレーターに依頼することが多いんです。一方で、ヨーロッパの話を聞くと、お題だけ提示して、「あなたのスタイルで書いてください」という感じが主流みたいです。それって、イラストレーターを信頼しているってことだと思うんです。
だから、日本でもヨーロッパのように、依頼通りのものだけじゃなく、テーマに沿ったイラストレーターオリジナルの案も出してもらうようにしてます。
約10年間愛され続けるギャラリー経営の裏側
――ギャラリールモンドを経営する中での嬉しさや、モチベーションはどういったものですか?
「田嶋さん、あの展示会が仕事に繋がりました」と報告してくれるイラストレーターの方がいると、それはもう一番嬉しいです! ギャラリーをやっている醍醐味だなと思います。
あとは、やっぱりイラストレーターは一人で絵を仕上げる仕事なので結構孤独なんですよ。だから僕は、なるべく同世代のイラストレーターで仲良くなってもらおうと思って、積極的に繋げています。プライベートで仲良くなるのはもちろんいいことなのですが、色々議論できる仲間を作ってほしいっていうのがありますね。
――反対に、一番大変なお仕事は何ですか?
スケジュール管理ですね。誰をどの時期に展示するか、季節に合わせて考えています。いつも春から夏にかけては、見た人が旅に行きたくなるような絵や風景画を描く方に声を掛けています。9 月以降になると展示を希望される方がすごく増えます。その関係で、秋はキャリアのある方や必ずお客さんを呼べるイラストレーターが展示をすることが多いです。また、1月から夏までは若手の人が中心です。バランスを見ながらスケジュールを組んでいます。
――ギャラリールモンドのお客さんとはどのような会話をされるのですか?
お客さんには、好きなイラストレーターをよく尋ねます。実績のあるイラストレーターだと、「この方の展示だったら必ず来ます」というファンの方がいるんですよ。こうやって会話の中で今後の企画・運営に活きる情報をインプットしています。
――お客さんとコミュニケーションを取るのは楽しそうですね。
そうですね。お客さんとの会話の中に色んなヒントが転がっています。新しく入ったアシスタントの手塚にも、積極的にお客さんと会話をするよう伝えています。
アシスタント・手塚さんインタビュー
2024年4月に「合同会社ルモンドトウキョウ」にアシスタントとして入社された手塚桃子さんにもお話を伺いました。イラストレーションへの熱意と和やかな笑顔でギャラリールモンドの雰囲気をいっそう明るくされています。
――手塚さんがルモンドで働くようになった経緯を教えて下さい。
好きなイラストレーターさんの個展がルモンドであったことをきっかけにギャラリーやエージェントに興味を持つようになりました。また、「SNSなどでイラストレーターさんの仕事が価値と見合わないギャラで搾取されてしまっている現状を変えたい」という思いもありました。田嶋さんの熱さに惹かれ、ご縁もあったため、今ルモンドで働いています。
――手塚さんの考えるルモンドの魅力はなんですか?
ブランド力だと思います。実は卒論でルモンドのブランド形成についてまとめました(笑)。
ルモンドに価値を感じている方がとても多いということは知っていたのですが、実際に働き始めてさらに実感しました。「ここで展示するのが憧れだったので嬉しいです」という作家さんもいらっしゃいました。田嶋さんのイラストレーションへの熱い想いが、約10年間愛され続けるギャラリーの運営に繋がっているのだと思います!
ギャラリールモンド
HP:ギャラリールモンド | galerielemonde.com | 東京都
営業時間:火-土曜日 12:00-20:00 日曜日 12:00-17:00(月曜日定休)
アクセス:150ー0001 東京都渋谷区神宮前6-32-5 ドルミ原宿201
東京メトロ千代田線・副都心線 明治神宮前駅 7番出口より徒歩1分
電話:03ー6433ー5699
田嶋吉信さん
千葉県松戸市出身。小学6年から中学卒業まで親元を離れ、山梨県韮崎市にあったスパルタ塾で旧日本海軍仕込みの禁欲的寮生活をしながら多感な思春期を送る。高校卒業後にホテルビジネスの専門学校へ通うが一年で道を誤ったことに気づき、中退して単身ロンドンへ語学留学する。D.I.Y.精神に大いに刺激を受け帰国後、Temple University Japanに入学。専門課程へ進むためThe American Intercontinental University in Londonへ編入。1995年にコマーシャルアート専攻でBA取得。
大学卒業以降、何でも対応できるグラフィックデザイナーを目指して音楽関連を中心に広告、エディトリアル、映像、CDカヴァ等のアートディレクションとデザインに携わる。2004年よりイラストレーションの活動を海外メディアで始めたことが、それまで広く浅く培って来たキャリアを見つめ直すきっかけになる。2007年秋に初著作「パリ!サーカス!パリ!」を上梓。本ポスターは2008年TDC賞(東京タイプディレクターズクラブ賞)入選。2009年世界陸上ベルリン大会の公式アーティストとして世界中から20名の一人として選ばれ作品制作。同年、アメリカLAで開催された企画展Redefining the Line〜アールヌーヴォーと現代女性像に招待され作品展示。
2015年1月よりギャラリールモンドの企画運営、2019年8月よりエージェントルモンド、2023年9月よりスタジオルモンドも運営し現在に至る。
手塚桃子さん
静岡県出身。静岡文化芸術大学出身。