美術講師の須田浩介さん。「これからの才能を育てる場で、新しい感性に触れられる」とお仕事のやりがいを楽しそうに語ってくださいました。また、葛藤に苦しんだ20代のご経験や「ウサギとカメ」の寓話を元に、若い世代へのアドバイスもいただきました。
さらに、「絵の具の不自由さが面白い」と、アナログ作品への強いこだわりを持つ須田さんに、イラストレーションの未来についても伺いました。クリエイターや学生の方は特に必見です!
須田浩介 / Kosuke SUDA
Illustrator
1987年生まれ。
2008年創形美術学校ビジュアルデザイン科イラストレーション専攻卒業。
フランス・パリ国際芸術会館シテデザールに9ヶ月派遣。
2008年〜2013年発行「Free Art Magazine S」編集者兼、掲載アーティスト。
跡見学園女子大学、創形美術学校、千葉デザイナー学院でイラストレーションの非常勤講師。
アクリルガッシュを使用した人物、動植物のイラストレーションを得意とする。
商業施設のキャンペーン、書籍、雑誌挿絵、ポスター等の仕事を手がける。
「向き合い続ける力」が成長の鍵 講師として感じる伸びる学生の特徴
――講師としてはどんなときにやりがいを感じますか?
「少しでも学生の将来に役立つことをできたら」と思って働けることがやりがいかもしれません。自分が携わった子に「あのとき、先生に話せたから良かった」とちょっとでも感じてもらえるといいですね。あと、これからの才能を育てる場で、新しい感性に触れられるのもすごく新鮮で刺激的です。
――とても素敵ですね。普段たくさんの学生と関わられている中で、伸びる学生の共通点があったらお聞きしたいです。
まずは授業に真面目に来ること(笑)。そして、真面目に来るだけじゃなくて、課題や絵に長く向き合っていられる人が絶対に伸びます。
絵の上手さや技術の良し悪しだけの話じゃなく、どれだけそれに向き合っていられるか、どれだけ時間を費やせるかが、はっきりと明暗を分けます。絶対に苦しいときは来るんですけど、それでも描いて乗り越えた人はやっぱり強いです。もう「描く」っていう自力がめちゃくちゃつくんで。行為に対しての馬力というか、エンジンが変わるって感じですね。
【クリエイター&学生必読】ウサギとカメって実際は……?
ウサギとカメの話あるじゃないですか? 美術学校に来る子って、ウサギのタイプの子が結構多いんですよ。「絵は自分の得意な分野だから」って言うんです。でも、結局あの話ではカメが勝ちますよね。ウサギの子って結構適当にやってもいいとこまで行くんですよ。話の中でウサギは途中で寝ていると思うんですが、僕は多分ウサギがどこかでつまずいて怪我したんだと思うんです。だから休んじゃおう、もう寝ちゃおうって。寝ても勝てるぐらいの気持ちで。現実でも割とみんなそこで1回やめちゃうと思うんです。
だけど、そこでやめずにウサギがめっちゃ努力して、つまずいても、ヨタヨタになっても、走っていたらウサギの方がすごい。ただ、ウサギの方がカメに比べて折れやすいんです。例えですけどね。
一方で、カメタイプの子のすごいところは、自分の得意不得意とか、上手い下手じゃなくて、「好きだから」って想いで永遠に進むんです。それは周りから見たらゆっくりかもしれない。でも、「大丈夫?」とか「本当に向いてるの?」とか言われてもやめないし止まらない。こういうやめずに続けられる人は一番強いし、結果が出ると思います。
ただ、無理しないことも大事です。今はやっぱりね、しんどい世の中になっているので。だから今の話は、とにかくあなたはそれが好きなことなんでしょ?やりたいことなんでしょ?だったら、今後どうしていくの?って考える際の話です。
――では、もしも今20代のご自身へアドバイスできるなら、何を伝えたいですか?
「もっと頑張れ」ですかね。結局、アーティストっぽい活動をしていたところからイラストレーターを目指して、今またアーティストぽいところに戻ろうとしているから……。最初からアーティストとして頑張っていたら、違う未来もあったのかもなと思うこともあります。好きなものは好きなままで、描きたいものは描いていていいんじゃないかと。もっと色々やっても良かったよと伝えたいですね。
アナログへのこだわり~不自由さから得られるものを求めて~
――須田さんはアナログの絵を描かれていますが、何かこだわりを持っていらっしゃるのでしょうか。
僕はデータじゃなくて、やっぱりちゃんと物体として作品を残したいんです。今はインターネットが当たり前の世の中なので、画面越しに作品を見るのが割とスタンダードになってると思うんです。だけど、携帯から見たら小さいですよね。僕は肉眼で見ながら絵を描いてるので、作品を肉眼で観てもらえるのが一番最高の状態だと思っています。そして、「コレクションしたいな」、「欲しいな」って思ってくださる方がいればとても嬉しいです。
アナログの絵は絵の具で描いていますが、その不自由さから得られるものや、信仰を感じられたりするのが、僕は割と嫌いじゃないです。だけど、普通に生活してるとデジタル機器って便利ですよね。僕も時間とか乗り換えとかめちゃくちゃ調べるし(笑)。合理的なところもあるんだけど、全部そうしたら多分面白くなくなっちゃうだろうな。自分で何も考えなくてよくなっちゃいそうです。
――アナログならではの魅力、とても興味深いです。現在デジタル作品を中心に描くイラストレーターも増えていると思いますが、須田さんは今後のイラストレーションについてどのように考えられていますか?
リアルな体験やアナログの絵が再注目されるんじゃないかと思っています。デジタルネイティブな子たちからすると、アナログって逆に新鮮なものになっているのかなと。アナログの絵は光の当たり方とかで色が変わることがあるのですが、それがデータ化すると分からなくなります。そういう特徴はアナログの面白さだと思うし、なんかちょっと生きている感じがします。
例えば、今、みんな昔のゲームをまたやったり、ピクセルアートドット絵を楽しんで、可愛いって言ったりもしています。最先端のテクノロジーや流行のものも、結局飽きが来ます。当たり前になりすぎるといいますか。そうすると人間はみんな「あの頃良かったよね」と、昔の面白かったことをもう1回しようとする。
だから絵の具のように不自由なものが、改めて「面白い!」と刺激になる日が来るかもしれませんね。
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